• タケダ初の開催となる 「メタバース社内交流会」 成功の舞台裏

タケダ初の開催となる
「メタバース社内交流会」
成功の舞台裏

2022年5月31日、タケダはインターネット上の仮想空間「メタバース」を使った社内交流会「クロスイノベーションカフェ」を組織横断的に開催した。デジタル活用を推進する製薬会社の中でも、メタバースという最新テクノロジートレンドを活用するケースは目新しい。その狙いや舞台裏を「仕掛け人」である飯山久美さんと井上隆志さんに聞いた。

役職を明かさずに
アバターで親睦を深め
「旧知の同期との再会」も

早速ですが、社内交流会「クロスイノベーションカフェ」ではどんなことをしたのでしょうか?

飯山:タケダではこの半年ほど、「会社を知る、経営陣を知る、仲間を知る」という3点を柱とした様々な社内コミュニケーションのイベントを開催してきました。今回開催した「クロスイノベーションカフェ」は、その総仕上げとして実施したものです。

経営陣よる基調スピーチを皮切りに、タケダのトリビアに関する〇×クイズや、28のトークルームを用意して経営陣も参加する自由な交流会を行いました。参加者同士の自発的な会話や交流を促し、参加した従業員それぞれが主役になってイベントを作り上げることを大切にしました。40分間設けた交流会は、当初「時間が長すぎるのでは?」とも推測していましたが、実際は時間が足りなくなるほど盛り上がりました。

井上:トークルームにも工夫を懲らして、「アウトドア好き」「読書好き」「筋トレ好き」など、普段の仕事とは直接関係ない趣味のトークルームも作ることで、従業員同士の繋がりやすさや会話のしやすさを工夫しました。経営陣と従業員が筋トレの話題で盛り上がるなど、普段のオフィスでは実現しないような交流がメタバースでできたのではないでしょうか。また、参加者は所属部署と名前だけを共有してアバターとして交流し、役職や年齢、性別がハイライトされなかった点も会話のハードルを下げることに寄与したと思います。

メタバース空間では経営陣も従業員との交流を楽しんだ
(上:広報やサステナビリティを統括する大薮貴子さん、下:ジャパン ファーマ ビジネスユニットを統括する古田未来乃さん)

参加者がメタバースで交流する“楽しさの実感”にこだわったんですね。

井上:全員で実施した〇×クイズでは、運動会のようにアクティブで賑やかなアバターの動きがあり、エンターテインメントとして非常に面白かったですね。また参加者同士で話す内容はカジュアルなものが多く、仕事とは離れたプライベートの部分での社内の新たな繋がりが生まれているように思いました。

印象深かったのは、コロナ禍で入社した従業員が、対面での交流が実現していなかった同期とメタバース上で出会えた、入社時の研修以来、数年ぶりに同期と盛り上がった、という声が挙がったことですね。皆さん、「会う」という言葉を使っているのが印象的でしたし、アバターという分身を介すことでオンライン会議にはないリアルで臨場感のあるコミュニケーションが生まれていたと思います。

飯山:今回のイベントの狙いのひとつは、経営陣も交えた形で部門や個人の属性を超えた交流の機会を作り、互いのバックグラウンドを意識しないカジュアルでフランクなコミュニケーションを促すことでした。オンラインでもリアルと同じようにあちこちで有機的な会話が生まれることを目指していましたので、その狙いは達成できたのではないかと思います。

参加した従業員の方からはどのような感想が寄せられましたか?

井上:「所属や階級を気にせずカジュアルに交流できてよかった」「ITリテラシーが高まった」「プログラムが楽しく時間が足りなかった」といった声が寄せられました。中でも、「皆で同じ時間、同じ場所を共有している一体感をすごく感じる」というコメントが多く寄せられました。

実際に180名ほどのアバターが一同に集まると想像以上にリアルに近い一体感を感じることができ、私自身も驚きとともに楽しさを実感し、思わず口角が上がりました。メタバースのポテンシャルの高さを実感しましたね。社内の縦と横の繋がりをフラットに生み出すテクノロジーとして、今後も活用できるのではないでしょうか。

メタバース空間上での交流の様子

従業員に「今までにない新しい体験」や
「ワクワク感」を届けたい

メタバースは新しいトレンドのテクノロジーですが、どのような経緯で注目されたのでしょうか?

飯山:メタバースとの出会いは、私たち運営チームの多様性が要因だったと思います。私たちは、グローバルインターナルコミュニケーションチームの専任従業員と社内の有志兼業従業員によるクロスファンクショナルチームなのですが、IT企業出身でメタバースに注目していたメンバーや、実際に所属部門内でメタバースイベントの運営経験を持つメンバーがチームにいたのです。これまで取り組んできた様々な社内コミュニケーション施策の集大成として、「会社」と「仲間」を知るコミュニケーションツールとして注目しました。

社内イベントの開催方法としては、リアル会場での開催やMicrosoft Teamsなどを用いたオンライン会議などありますが、あえて今回メタバースでイベントを開催したのはどんな狙いがあるのでしょうか?

飯山:イベント会場への移動負担の軽減や新型コロナウィルス感染拡大防止のみが理由なら、Microsoft Teamsなどのオンライン会議でもよかったのかもしれません。しかし、あくまでこのイベントのミッションは、従業員の皆さんにより一層タケダのことを好きになっていただき、モチベーションを高く持って仕事をしてもらうことです。あえてメタバースを導入し、従業員に「今までにない新しいことをする」というワクワク感や、アバターで新しい自分を作れるという楽しさを届けることで、「また明日から頑張ろう」という気持ちになって欲しいという思いが強かったと思います。

オンライン会議では、参加者全員でひとつのオーディオを共有するため、有機的な会話や交流は生まれにくいという点があります。一方、メタバースであれば、バーチャルでありながらもリアルに近い状況での有機的なコミュニケーションが可能となり、参加者の中に自主性が生まれます。また、会場設営のための工数や費用が抑えられ、参加者の移動や宿泊の負担もありません。

ただし、メタバースが何にも代えがたい唯一/最善のプラットフォームというわけではないと考えています。一体感や創造性の醸成はリアルに勝るものはないですし、オンライン会議にも多くの利点があります。今回の開催で得られた気づきをもとにして、今後も様々な試行錯誤をしていければと考えています。

飯山久美さん

開催成功の背景にあった、
タケダのチャレンジスピリット

従業員の交流を盛り上げるために工夫したことを教えてください。

井上:チーム全員で企画内容についてのディスカッションを重ね、企画の実効性を検証するテストイベントも行いながら「どうすれば自主的な交流が生まれ、参加者の方々が楽しめるか」という点を大切に検討していきました。冒頭でお話した「トークルームごとにテーマを設ける」いうアイデアは、チームの中の兼業従業員の発案で生まれたものです。また、「近くの人に話しかけてみよう」といったポップアップメッセージを全体アナウンスとして参加者全員に配信することで交流を促しました。

運営面で苦労した点などあれば、エピソードをお聞かせください。

井上:日本国内の全社員を対象にしたメタバースイベントということで、技術的な課題がありました。動作環境、セキュリティ、ネットワークなど、前例がない課題を整理し解決した上で企画を考えないといけないのが、なかなか大変でした。この点については、IT部門をはじめ他部門の協力がなければ実現しなかったと思います。

また、参加者や関係者への操作方法のレクチャーには丁寧に取り組み、テスト参加者も交えてリハーサルを実施し、より快適に楽しんでいただけるように工夫してイベント当日に臨みました。

様々な苦労がありながらも、メタバースで社内交流会という初めての試みを成功させることができた要因を教えてください。

飯山:まず第一に、経営陣のサポートがあったことです。今回イベントに参加した経営陣も私たちのやりたいことに賛同し、背中を押してくれました。彼らから全面的な協力が得られたのはとても大きかったですね。第二に、これまでの様々な社内コミュニケーション施策を通じて従業員の自主性が高まっていたことも成功の背景にあると思います。今回のイベントは参加人数を180名ほどに限って実施しましたが、すぐに定員に達しました。すでに自主性がタケダの社内カルチャーになっていることを実感しています。

井上:IT部門やコンベンション部門をはじめ、様々な部署がメタバース導入をサポートしてくださったことは本当に大きかったと思います。そして、その背景には「データとデジタルの力で、イノベーションを起こす」ことを目指し、新しいテクノロジーを積極的に取り入れて試行錯誤を重ねながらチャレンジするカルチャーが根付いていることがあると思います。

クロスイノベーションカフェ運営チーム

初開催の
メタバースイベント、
その反響は海外へも

イベント開催後、社内ではどのような反響がありましたか?

飯山:反響は非常に大きかったです。イベント終了直後に企画や運営についての問い合わせが15件以上もタケダ社内の各部署からメタバースの提供元企業に寄せられました。イベントの開催前には海外の拠点からも「日本でメタバースのイベントをやる」と聞きつけた従業員からオブザーバーとして参加したいという問い合わせもありました。

今回のメタバースイベントを終えた感想を教えてください。

井上:私たちチームにとって初めての試みで、かつIT部門を含めて部門横断的に幅広い関係者を巻き込んだ取り組みだったので、準備はとても大変でした。「参加者をがっかりさせたくない」というプレッシャーも大きく、無事に終えられてホッとしています。多くの人がメタバース活用の利点を実感できるポジティブな経験を築けたことで、タケダのデジタル活用の推進に貢献できたのではと思っています。

飯山:初めてのプラットフォームで不安はたくさんありましたが、参加者に「楽しいイベントだった」「もっと長く交流したかった」という気持ちになってもらえるよう意識して準備してきました。今回の新しいデジタル体験が、タケダのデータ・デジタル活用の次のモチベーションになると信じています。

そして、今回このイベントの運営に携わっていただいた運営チームの皆さん、そして技術サポートをしてくれたIT部門やイベント制作のサポートをしてくれたコンベンション部門、新技術活用の背中を押してくれた経営陣、ご協力いただいた皆さんと、なによりも積極的に参加いただいた従業員の皆さんに心から感謝したいと思います。

井上隆志さん

リアルの良さ、
デジタルの良さを
適材適所で活用していく

今後の社内コミュニケーションの更なる活性化、そしてメタバースをはじめとするデジタルの活用に向けて、抱負を聞かせてください。

井上:メタバースのように、新たな価値を持つデジタルツールは今後も積極的に取り入れていきたいと考えています。一方、リアルなコミュニケーションが生み出す価値も十分に理解しているので、リアルとデジタルを相互に補完し合いながら、これからの社内コミュニケーション活性化を推進していきたいですね。

飯山:アバターを通じたコミュニケーションは、役職や年齢、背景に関係なくカジュアルに交流できるというメリットをイベントのアンケートから感じ取っています。一方で、大規模なイベントの開催はITインフラに一定の負荷を掛けるということもわかりました。こうした経験を活かして、今後はより小規模でカジュアルな交流会を繰り返し開催できるような取り組みも検討しています。また、メタバースだけでなく、リアル開催、オンライン会議など、様々な選択肢を適材適所で活用しながら、今後も従業員にワクワクしてもらえるような企画を展開できればと考えています。

PROFILE

井上 隆志

井上 隆志

グローバルコーポレートアフェアーズ インターナルコミュニケーションズ スタッフ。前職で組織変革の社内コミュニケーションの指揮やエクゼクティブのコミュニケーションサポートに携わる。現在はその経験を活かし、社内イベントの企画・運営やニュースの作成など、日本全体の社内コミュニケーション業務を担当する。

飯山 久美

飯山 久美

グローバル コーポレート ブランディング & コミュニケーションズ(GCB&C) / ジャパン インターナル コミュニケーションズ ヘッド。GCB&Cのリーダーシップチームの一員として、グローバルと連携しながら日本全体の社内コミュニケーションを立案・牽引する。COVID-19のクライシスマネジメントコミッティーおよびCFO傘下のグローバル ファイナンスのコミュニケーションも務める。

※本記事は2022年7月までの内容に基づいて記載。

LOADING