• 私の「誠実と革新」 Vol.04

タケダがグローバル化を進めるにつれて必要になった日本国内の社内規則(規定)の見直し。多様な人材が働くタケダにとって、複雑な規定の再編は急務であり、2019年にプロジェクトが立ち上がる。タケダのコーポレートガバナンス関連業務を担当し、日本における規定の最適化プロジェクトを推進してきた石野誠悟さんに、その道のりとプロジェクトを通して得た想いを聞いた。

※BSC:ビジネス&サステナビリティ・コミッティー

日本発グローバル企業としての成長のために

なぜ、規定を見直す必要があったのでしょうか?

タケダでは、グローバル化を進める中で、タケダの各国で共通して適用される規定としてグローバルポリシーが整備されてきています。その一方で、日本中心の従来規定もまた、変化をする必要が出てきたのです。本社機能を有する日本のタケダに適した規定体系とは何か? という視点も持ちながら、多様な人材が働くタケダにふさわしい規定体系へと改革する必要があり、プロジェクトが立ち上がりました。

自身の転機にプロジェクトが始動

どのような想いでプロジェクトに参画したのですか?

私は入社してから10年ほど研究職に就いており、主に外部研究機関との共同研究に携わっていました。タケダ側の共同研究の推進役として何をすべきなのかを追求する中で、自分のアクションやサポートが周りに与える影響が、タケダと共同研究先の双方の成果につながることにやりがいを感じていました。その延長線上として、会社全体の運営をサポートするような業務に就きたいという気持ちが高まっていたように思います。キャリアを見直すタイミングで、経営企画部での業務に魅力を感じて異動を希望しました。

日本のタケダにおける規定を見直すプロジェクトに参画したのは、2019年12月からです。上長からミッションを伺って、プロジェクトの成功で得られるタケダの従業員のメリットが非常に大きいと感じ、取り組んでみたいという強い気持ちが湧き上がってきたことを今も覚えています。

多様な人材を抱えるタケダに最適な社内規定とは?

タケダは240年の歴史があり、株式会社として規定を整備し始めてからも約100年の歴史があります。規定は緻密に設計されていて、日本のタケダ全体に適用されるものだけでも190ほどの規定文書が存在していました。

社内規定は、従業員が守るべき規則や事業の運営方針・ルールであり、コンプライアンス(法令遵守)を高めるために必須ですが、多様な人材が働くタケダでは、複雑な規定はオペレーションに影響します。働きやすく、物事をスピーディーに推進できるシンプルでわかりやすい規定が求められていたのです。

浮き彫りになっていく数々の困難

プロジェクト開始時の状況を教えてください。

目標は、長い歴史の中で複雑化した規定をたった1年という短期間で大幅に簡素化することでした。規定の数を減らすだけではなく、規定体系のわかりやすさを追求することまでも視野に入れていました。ただでさえ専門外のことや馴染みがないことが多い中で、1年で改革ができるのかと不安でしたが、とにかく走り始めないと間に合わない。自分に与えられた使命だと感じ、まずは私が所属する経営企画部と、規定の審査管理全般を担っている日本法務とでタッグを組み、規定簡素化プロジェクトの横断組織(事務局)を構成しました。

規定の簡素化は、多くの方々の理解がないと実現できないと思うのですが。

日本国内に散らばった規定の責任者を探し当て、プロジェクトの主旨に賛同を得るのに時間をかけました。さらに、規定を大きく簡素化するためには、社内の各部門や従業員への影響なども配慮しながら進める必要があります。オペレーション上の影響をチェックしながら丁寧に進めました。

プロジェクト側の「もっと簡素化することはできないのか」「グローバルポリシーがある中で、日本における規定はそもそも必要なのか」という認識と、規定の責任者側の「どこまで簡素化が必要なのか」といった認識の違いを擦り合わせる必要もありました。規定に沿った業務フローが各部門に存在する中で、簡素化を持ちかけることは、オペレーションそのものに一石を投じることにもなりかねず、議論が白熱したこともありました。誠実に議論を進めて、多角的に簡素化の方向性を見極めなければなりません。

こういった議論や調整を積み重ね、規定簡素化を実現できたのも、規定の簡素化による従業員の日々の時間効率化は、患者さんのための活動に使う時間を増やすことに繋がるという強い信念を持ち、多くの仲間から理解を得ることができたからだと思っています。

最もハードルが高く、難しかった規定の簡素化は何でしたか?

このプロジェクトは日本に存在する規定を対象としていましたので、本社機能を有する日本で保有していたコーポレートガバナンスに関連する規定も簡素化の対象として検討を進めました。タケダには、意思決定システムとオペレーション上の重要ルールをとりまとめた「タケダグループの経営管理方針(T-MAP)」が存在していたのですが、一方で経営会議体ごとの運営ルールも別の規定文書として存在していました。この重複を解消するための簡素化とはいえ、重要な経営会議体の運営ルールですので、その必要性についてはかなり議論しました。結果として、法定の意思決定会議体である取締役会の運営ルールは規定として維持し、その他の経営会議体の運営ルールはT-MAPに一本化するといった思いきった変革を行いました。また、コーポレートガバナンスに関連する規定を日本だけではなくグローバルで共有できる文書とすべく、規定体系も大きく見直しました(図)。

コーポレートガバナンスに関連する規定の簡素化や規定体系の変更を達成するためには取締役会の承認を得る必要があります。対象の規定文書を廃止するにあたっての良い点・悪い点の整理や他社状況も照らし合わせた上でのロジック立て、規定体系を変更する際の課題の解決、さらには体系変更についてどのようにグローバルのタケダ全体へ周知・浸透させていくかなど、さまざまな意見や考えをぶつけ合いながら、チームで多くの苦労を重ねたことを今でも思い出します。

これらの変革は、タケダのコーポレートガバナンスに関する規定の透明性を向上させるとともに、グローバルで実効的かつ迅速な意思決定を進めるための基盤として必須の選択だったと思っています。

困難を打開するチームの結束

数々の困難を乗り越えられた秘訣はどこにあるのでしょう。

経営企画部と日本法務がタッグを組んだチームであったということ、チームとして一丸となって成功に向けて進めていこうという信念があり、また、さまざまな方々の協力を得ながら誠実にプロジェクトを進めたことです。

数多くの規定を短期間で簡素化するため、規定の責任者には通常業務に加えて多くの文書の改訂業務をお願いすることになります。そのため、信念を強く持ってプロジェクトの意義を説明して賛同を得ること、そして丁寧なコミュニケーションを特に心掛けました。事務局メンバーはもちろん、数多くの人事規定の簡素化に対応してくれたグローバルHRや、簡素化後の規定を短期間で審査してくれた日本法務からのサポートは特に大きく、このプロジェクトの成功に不可欠なものだったと思います。

また、大幅な規定簡素化が現場に与えうる影響を、大勢の仲間の協力があって丁寧にチェックしながら進められたことも良かったのではないかと思っています。多くの社内のサポートがあって、このプロジェクトの成功がありました。感謝の気持ちでいっぱいです。

プロジェクトでは、月次で進捗報告会を行っており、プロジェクトのオーナーである古田さん(前コーポレート ストラテジー オフィサー&チーフ オブ スタッフ、現JPBUプレジデント)、中川さん(グローバル ジェネラル カウンセル)からは常にチームへの激励の言葉をいただいていました。私自身のモチベーションアップや心理面のサポートになり、プロジェクト推進への意欲につながりました。

規定の整備から得た
収穫と喜び

規定を簡素化したことで、社内から反響はありましたか?

見たいときにすぐ見られる規定であることが重要です。最終的には192あった規定を38に削減し、従業員の皆さんが目的の規定まで辿り着くための時間を大幅に短縮できました。「規定がかなりわかりやすくなった」、「探しやすくなった」、という声が多々聞かれました。

規定の責任者と利用者の両方からの評価だけでなく、ウェバー社長から240周年を迎える日本のタケダにおける主な活動の一つとして評価されたこともチームの励みになりました。今後の規定の改定作業等の効率化につながるとの声もあり、このプロジェクトをきっかけにタケダの規定はさらにわかりやすく、透明性の高いものになるはずです。

これから実現していきたいことはありますか?

日本のタケダ全体に適用される規定の簡素化を終えた後、このプロジェクトでは、タケダの会社ウェブサイト上のコーポレートガバナンスのページの刷新と、コーポレートガバナンスドキュメント(定款、取締役会規程、監査等委員会規程、指名委員会規程、報酬委員会規程等)の開示に取り組みました。この開示は規制で求められる以上の対応であり、タケダのコーポレートガバナンスの透明性をさらに向上させることができたと思っています。

また、私はこのプロジェクトの他に、タケダのコーポレートガバナンスに関連する業務にも携わっています。タケダのコーポレートガバナンスは、取締役会やタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)※の多様な構成や迅速・公正な意思決定体制など、非常に優れた体制・企業統治の仕組みになっていると思っています。2022年4月の東京証券取引所の新市場区分への移行などで、企業のコーポレートガバナンスに注目が集まっていますので、タケダの取り組みが世の中に知られていく機会を増やしていきたいと思います。

※タケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)
社長兼CEO、およびタケダグループの各機能の統括メンバーで構成される組織。

一方で、従業員の視点で見ると普段の業務ではあまり気づかない点も多いため、社内の方々にもっとタケダのコーポレートガバナンス知ってもらえる方法を模索していきたいです。その際も、このプロジェクトのようにタケダの色々な仲間と協力して取り組んでいきたいと思っています。

プロジェクトの先に
見えたもの

プロジェクトが終盤を迎える中、石野さんが今思うこととは?

このプロジェクトのメンバーはダイレクトに患者さんと向き合っているわけではありません。ですが、「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」というパーパスを掲げるタケダにとって、このプロジェクトの成果は、迅速な意思決定や効率的なオペレーションを支え、結果的にタケダが世界の患者さんに尽くすことにつながっていくと信じています。

会社や従業員のために取り組んでいくことは間接的ではありますが、タケダの一員として携わった業務が、患者さんのために役に立つことを心から願っています。

PROFILE

石野 誠悟

経営企画部 BSCオフィス&コーポレートガバナンスマネジメント 課長代理。タケダの研究者としてキャリアをスタート。現在は経営企画部でガバナンス関連規定の開示やコーポレートガバナンス報告書の作成など、ガバナンス関連業務を担当。その一環で2019年に始まった規定簡素化プロジェクトにも携わった。

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