• DX INSIGHTS Vol.05

データとビジネスを
つなぐ翻訳者
ってナンダ?

データとビジネスをつなぐ
翻訳者ってナンダ?

革新的な医薬品を創出し続けるために――。タケダは、企業理念を体現するため「データとデジタルの力で、イノベーションを起こす」ことを約束しています。

タケダが重視するデジタル分野への投資。中でも、2022年10月から行われていたリスキリング・プロジェクト「データ・デジタル&テクノロジー(DD&T)アカデミー」は、社内外から注目を集めました。今回は、約半年の受講期間を終え、それぞれの現場で活躍するアカデミー卒業生の「その後」に迫るべく、DD&Tアカデミー修了生でデータの利活用を推進する今井崇仁さん、今井さんとともにプロジェクトを進める、マーケティング担当の大西修平さん、チュアノイ・サーヤンさんの3人に聞きます。

DX INSIGHTS Vol.03
「DD&Tアカデミー」について
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DX INSIGHTS Vol.04
「アカデミー参加者の声」
について
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希少疾患の患者さんを深く
理解するための
新薬マーケ
ティングプロジェクト。
3人の挑戦とは

皆さんが取り組んでいるプロジェクトと、それぞれの役回りについて教えてください。

【大西】私は、患者さんが非常に少ない病気(希少疾患)を対象にした新しい薬の候補のマーケティングリードを務めています。その薬が将来、規制当局から承認を受けた際に、その薬を必要とする患者さんにきちんとお届けするためのマーケティング戦略立案を、製造・開発等の多くの部門と連携しながら進めています。

【今井】 私はDD&TのAI&ビッグデータチームで、データサイエンスとビジネスを繋ぎ、ビジネス課題を分析課題に翻訳して課題解決を目指すビジネストランスレーターをしています。今回はリアルワールドデータ(RWD※)を活用して当チームのデータサイエンティストと協業しながらビジネスサイドである大西さんに様々な提案や分析を行いました。

【チュアノイ】私はもともとR&D部門所属の研究者ですが、マーケティング部門との社内兼業で、今回の取り組みに加わりました。今井さんから提案された分析手法などについて、大西さんとともに検討するのが主な役割です。

※RWD…リアルワールドデータ。臨床現場において得られた治療に関するデータの総称。

今井さんに相談されたきっかけについて教えてください。

希少疾患を対象にした新薬候補のマーケティングを担当する大西さん

【大西】対象となる患者さんが多い薬であれば、当社データの分析や他社の動きを観察するなど、従来からの手法でマーケティング戦略を練ることもできます。今回は患者さんの数が非常に少ないため、そもそも疾患に関するデータが十分ではありません。患者さんのニーズやペインポイントを反映した戦略を立案するためには、RWDを分析することでまずは患者さん達の診療実態を把握する必要があると考え、今井さんのチームに相談しました。

【今井】個人情報が削除されたレセプトデータ(※)をはじめとする、数あるRWDの中から分析に最適なものを選ぶにあたり、まずは大西さんが考えているビジネス課題を深堀りし、疾患の特性についてディスカッションしました。他にも、国内外の先行研究も調査しながら、どんな分析をすれば役に立つのかを考え、提案しました。

※レセプトデータ…患者さんの傷病名、医療機関が行った医療行為の詳細などが記録されており、患者さん個人が特定できないよう加工された情報。

【大西】具体的には、マーケティングを行う上で知りたい患者さん達の状況を今井さんに伝えると、今井さんがこれまでの経験と新しく身に着けたデータサイエンスの知識を動員し「知りたい」情報にたどり着くためにどのデータを使用すれば適切な情報が得られそうか、どのようにデータを分析すべきかなど、考えてくれました。こちらのニーズに沿った分析を出すだけに留まらず、逆に「こんな切り口で分析したらどうか」などの価値ある提案をしてくれました。

【チュアノイ】私は、分析結果をもとにさらなる分析を行い、マーケティング部門のニーズに合わせたデータの見せ方を工夫するなどの再編集をしました。社内兼業している研究者としての視点も活かしつつ、取り組んでいます。

実際に業務をしてみて、社内デジタル人財ならではの強みを感じましたか?

【大西】こちらの要望を伝えると、的確にニーズをくみ取った答えが返ってきます。いつも期待以上の分析が出てくるので、とても助かります。今井さんがビジネストランスレーターとしてデータサイエンティストとの間に入ったことで、スムーズにRWDが活用できたことも特筆すべき点です。やはり、タケダをとりまくビジネス環境や製薬業界に関する知見など、事前に認識のすりあわせをせずとも同じタケダの人間として、同じ「言語」でやりとりできるのはありがたいですね。

【チュアノイ】今井さんが、こちらから要望したこと以外にもたくさん提案をしてくれたことに感銘を受けました。調査すべき項目を検討したときには、追加で2倍くらい提案してくれたこともありましたね。データだけではなく、タケダのビジネスやメディカルアフェアーズ(※)部門での経験を活かしているからこその対応だと感じました。

※メディカルアフェアーズ(MA)…自社医薬品の価値を、適切な患者さんに、適切なタイミングでお届けすべく、医科学的な視点から中立的に活動する専門家集団。国内の医学専門家との医科学的交流に基づくエビデンス創出、産官学連携を通じたデジタル活用、プロモーション/ノンプロモーション資材のレビュー、市販後調査等、業務内容は多岐にわたる。

希少疾患について分析する上で、大変だったことはなんでしょうか。

【今井】分析項目の選定には苦労しました。分析項目はビジネス課題と臨床課題を踏まえて設定しますが、特に分析結果がマーケティング戦略に活きるのか、医科学的に適切な分析になるかを意識して取り組みました。
今回対象となった疾患は非常に多様な合併症を併発し、さまざまな診療行為が行われます。膨大なデータの中から分析項目として相応しい合併症や診療行為をひとつずつ検討しました。このプロセスには多くの時間がかかりましたが、疾患特性による分析の難しさに挑戦するという貴重な経験であり、大きなやりがいにもなりました。

タケダ育ちのデジタル人財が活躍していることについて、どんな感想を持たれましたか。

【チュアノイ】今回一番感じたのは、社内の人間同士だからできる「スピード感」です。外部の方とやりとりすると、どうしても市場の背景、薬の詳細など、説明にも時間を要します。今井さんのような社内人財であれば説明は最小限に抑えながら、コミュニケーションも円滑に進められ、結果として、アウトプットの品質も上がると思いました。

社内兼業で医療用医薬品のマーケティングに関わるチュアノイさん

【大西】チュアノイさんが言った通りで、タケダの社内事情やビジネスの状況、課題などを的確に捉えた上でデータ分析を進めてもらえるのはありがたいです。

今後の目標や、仕事に臨むうえでのモチベーションを教えてください。

データの利活用を推進する今井さん

【今井】世の中には、今回のような病態の解明されていない疾患が多数存在します。これらの多くは治療や研究が限られており、ペイシェントジャーニー(※)や治療実態が明らかになっていないことが多いです。
私はデータ分析を通じて、この不透明な実態の解像度を上げ、患者さんとご家族、懸命に治療にあたられている医療関係者の方々に少しでも貢献したいと思っています。この想いが私のモチベーションの源泉です。アカデミーでの学びはもちろん、これまでにタケダで得た知見を活かして、今後も患者さんや医療関係者の方々のために貢献していきたいです。

※ペイシェントジャーニー… 健康な人が病気を自覚し、医療機関にかかって治療を受け、回復していく過程を旅路と捉えたもの。未病から確定診断以降、患者さんが経験する一連のプロセスのこと。

DD&Tアカデミーという、タケダ独自のデジタル人財育成の試み。今回の事例のように、さっそくビジネスの現場で成果を発揮している事例もあります。

革新的な医薬品を、より早く、より確実に患者さんに届けるために。タケダは、これからもデータ・デジタル&テクノロジーの活用を進めていきます。

PROFILE

今井 崇仁 今井 崇仁

今井 崇仁

DD&Tアカデミーに参画、現在は国内ビジネス部門 データ・デジタル&テクノロジー部門所属。ビジネストランスレーターとして、主にリアルワールドデータ関連プロジェクトに従事し、データの利活用を推進。アカデミー参画前は、MR、MSL(Medical Science Liaison)を経験。

大西 修平 大西 修平

大西 修平

国内ビジネス部門 マーケティング部所属。希少疾患を対象にした新薬候補のマーケティングを担当。

チュアノイ  ・サーヤン チュアノイ  ・サーヤン

チュアノイ ・
サーヤン

研究開発部門 ドラッグ ディスカバリー サイエンス部所属。がん免疫や細胞治療、消化器疾患に適したLNP(脂質ナノ粒子)の処方設計およびプロジェクトマネジメントを行う。社内兼業として医療用医薬品などのマーケティングにも関わる。

本記事は2024年2月までの内容に基づいて記載。

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